問題提起:
保育業界がSDGs(持続可能な開発目標)にどのように貢献しているのか、その取り組みや効果について知ることは重要です。子供たちの未来や社会全体の持続可能性に関わる重要なテーマです。

記事を読んでわかること:
この記事では、保育業界がSDGsをどのように支援しているかに焦点を当て、具体的な取り組みやその効果について解説します。質の高い教育や健康促進、ジェンダー平等、貧困撲滅など、各目標における保育業界の役割を明らかにします。

記事を読むメリット:
この記事を読むことで、保育業界がSDGsに果たす役割や取り組みの重要性を理解し、持続可能な社会の実現に向けた具体的な取り組みについて知ることができます。また、保育施設や地域社会におけるSDGsへの取り組みの成功事例やポイントも紹介します。

SDGsとは?

SDGs(持続可能な開発目標)は、2030年までに貧困、食糧安全保障、教育、ジェンダー平等、健康、清潔な水、エネルギーなど、17の目標を達成するための国際的な取り組みです。保育業界もその一翼を担い、幼少期の子供たちの未来をより良くするためにSDGsに取り組んでいます。保育業界がSDGsを達成するためには、質の高い教育、健康促進、ジェンダー平等、貧困の撲滅など、さまざまな取り組みが求められます。

SDGsと保育業界の関連性の解説

SDGsとは、持続可能な開発のための世界的な取り組みであり、保育業界はその中でも特にSDG4(質の高い教育をみんなに)やSDG3(すべての人々の健康と福祉を確保する)に焦点を当てています。保育施設は、子供たちの成長と発達を支援する場であり、その役割からSDGsの達成に向けた重要な役割を果たしています。保育業界はSDGsを達成するために、教育や健康、ジェンダー平等などの観点から積極的を進めるべきであると考えます。

SDG4: 質の高い教育をみんなに

保育施設は、幼少期の子供たちに質の高い教育を提供することで、将来的な学習の基盤を築きます。具体的には、教育プログラムの充実化やカリキュラムの見直し、適切な教材や教具の導入、教師の継続的な研修などが行われています。また、子供一人ひとりの発達段階や個性に合わせた個別支援も重要です。以下が具体的な事例です。

保育業界が質の高い教育を提供する方法

教育プログラムの多様化と個別化
保育施設では、幅広いニーズに対応するため、教育プログラムを多様化し、子供一人ひとりの発達段階や興味に合わせて個別化が進んでいます。

早期教育の重視
幼少期は子供の学習の基盤を築く重要な時期であり、保育業界では早期教育の重要性を認識し、その充実に取り組み始めています。

保育施設における教育プログラムの改善と充実

カリキュラムの見直しと適応
時代や地域のニーズに応じてカリキュラムを見直し、適切な内容を提供します。また、新たな教育手法や技術を取り入れ、教育プログラムを充実させます。これは自社だけの実施が難しいところでもあるため、外部コンサルタントなどの協力を仰いだ上で実施する施設が多いようです。

教育資材や設備の整備
最新の教育資材や設備を導入し、子供たちがより豊かな学習経験を得られる環境を整えます。目に見えてコストがかかる物であるため、導入をハードルが高いように感じてしまいますが、補助金や助成金の利用で、実負担額を抑えることができる場合があります。

子供たちの学習環境の向上とその効果

遊びを通じた学びの促進
遊びを重視した学習環境を整え、子供たちが自発的に学びを楽しめるようにします。これにより、子供たちの学習意欲や創造性が促進されます。

インタラクティブなアプローチの導入
インタラクティブな学習方法を取り入れ、子供たちが能動的に関与し、問題解決能力やコミュニケーション能力を育成します。

SDG3: すべての人々の健康と福祉を確保する

保育施設は、子供たちの健康促進にも力を入れています。定期的な健康チェックや予防接種プログラムの実施、健康的な食事や運動の促進などが行われています。子供たちが健康的な生活習慣を身につけることで、将来的な健康と福祉が確保されます。以下が具体的な事例です。

保育業界が健康促進に果たす役割

健康教育の実施
保育施設では、子供たちに健康的な生活習慣や衛生に関する知識を提供し、健康促進に取り組みます。例えば手洗い指導や歯磨き指導も立派な取り組みの1つです。

心理的な支援の提供
子供たちが心理的な健康を保つために必要なサポートやケアを提供し、心の健康を促進します。例えばキンダーカウンセラー(保育カウンセラー)と保育士とが連携して、心理的な側面からコンサルテーションやアドバイスをもらったり、保護者から心理的な悩みや子育てに関する相談を受けます。

保育施設における健康管理と予防接種プログラムの重要性

定期的な健康チェックの実施
子供たちの健康状態を定期的にチェックし、早期に問題を発見して適切な対応を行います。健康診断・身体測定はもちろんの事、日々の体調管理をアプリケーションを使って行い、保護者と連携することも重要です。

予防接種プログラムの実施
予防接種を定期的に行い、感染症の拡大を防ぎ、子供たちの健康を守ります。

子供たちの健康的な生活習慣の促進とその効果

健康的な食事の提供
バランスの取れた栄養豊富な食事を提供し、肥満や栄養不良などの健康問題を予防します。

運動や体力活動の促進
定期的な運動や体力活動を取り入れ、子供たちの体力や運動能力を向上させます。

SDG5: ジェンダー平等を実現する

保育業界は、男女共同参画を促進し、性別に関わらず子供たちが自己を表現し、成長できる環境を提供しています。ジェンダーに関する教育プログラムや意識啓発活動が行われ、子供たちがジェンダーに関する偏見やステレオタイプから自由になれるよう支援されています。以下がその事例です。

保育業界におけるジェンダー平等の重要性

ジェンダーに関する意識の啓発
保育施設では、性別に関するステレオタイプや偏見を排除し、子供たちが自由に自己を表現できる環境を提供します。例えば、食べ物や動物などの個人マークに特に男の子っぽい・女の子っぽいという印象を与えないデザインを採用したり、男女での呼び方を統一(さんやちゃん付け)することもその一つです。

ジェンダーに関する教育プログラムの導入
ジェンダー平等に関する教育プログラムを導入し、子供たちにジェンダーに関する理解を深めます。例えば明日葉保育園では子どもたち自らがジェンダーについて考える時間を設け、LGBTQを含む性の多様性について話す試みを始めました。保育士の先生からLGBTQを含む性の多様性について話をすると、子どもたちから「僕もピンクの服着ることある!」「私も仮面ライダー見ているよ」といった声が上がり、性別関係なく自分の好きなものを話して盛り上がる姿が見られました。

保育施設における男女共同参画の推進

職員の多様性の尊重
保育施設では、男性保育士や女性職員が均等に活躍できる環境を整え、男女共同参画を推進します。

ジェンダーバイアスの排除
子供たちが性別に関係なく自由に遊び、学び、表現できるよう、ジェンダーバイアスを排除する取り組みを行います。例えば、おもちゃや遊具の選択において性別に関係なく幅広い選択肢を提供し、子供たちが自由に選択できるようにします。

SDG1: 貧困を撲滅する

保育業界は、経済的に困難な家庭の子供たちにもアクセス可能な保育サービスを提供することで、貧困のサイクルを断ち切る一助となっています。料金の軽減措置や奨学金制度の導入、地域コミュニティとの連携による貧困撲滅の取り組みが行われています。

保育業界が貧困撲滅に与える影響

経済的に困難な家庭への支援
保育施設では、経済的に困難な家庭の子供たちに対して、料金の軽減措置や奨学金制度を導入し、保育サービスへのアクセスを促進します。

社会的格差の是正
貧困層の子供たちにも質の高い教育や健康サービスを提供することで、社会的格差を縮小し、貧困の連鎖を断ち切ります。

経済的に困難な家庭の子供たちへの支援策

料金の軽減措置
保育料や給食費などの負担を軽減するため、経済的に困難な家庭に対して料金の減免や割引を行います。

奨学金制度の導入
経済的に困難な家庭の子供たちに対して奨学金を提供し、保育施設への参加を支援します。

地域コミュニティとの連携による貧困撲滅の取り組み

地域ボランティア活動の推進
地域のボランティア団体と連携し、経済的に困難な家庭の子供たちに無償で保育サービスを提供するプログラムを実施します。

地域支援ネットワークの構築
地域の保育施設、学校、地域団体などが連携し、貧困家庭への支援や情報提供などの活動を行います。

これらの取り組みにより、保育業界はSDG1の目標である貧困撲滅に貢献し、経済的に不利な立場にある子供たちにも機会均等な教育や福祉を提供することが可能になります。

そのほかの目標と取り組み

そのほかの目標と保育業界におけるSDGsへの取り組みの成功事例として以下のようなものがあります。

食育とフードロス削減(目標2「飢餓をゼロに」)

子どもたちに食事の大切さを伝えることで、目標2「飢餓をゼロに」に貢献します。特に食育は重要な論点です。例えば海に泳いでいる魚と食べている魚は別物で、切身の状態で泳いでいると思っている園児もいるようです。加工の過程でどのようなロスが出るのか考える機会を与えることは子供たちにとって大きな影響を与えます。もちろんそれだけでなく、植物の栽培や食材の無駄を減らす活動も重要です。

保育士の業務負担軽減と学ぶ機会(目標8「働きがいも経済成長も」)

働きがいと経済成長を考え、保育士の業務負担軽減や働きがいを学ぶ機会を提供し、目標8に貢献します。ICT化はもちろん、施設のスタッフだけでなく、外部パートナーの利用を積極的に検討し、業務負担の軽減や学ぶ機会を提供しましょう。また園児にお手伝いしてもらう事も良い機会の提供になるでしょう。

住み続けられるまちづくり(目標11「住み続けられるまちづくりを」)

地域の連携した活動や子どもを預けやすい環境づくりが目標11に関連します。保育園・幼稚園と児童館などと連携した取り組みやイベントを進めている地域も増えてきています。

ゴミのリサイクルや分別の実施(目標12「つくる責任つかう責任」)

ゴミのリサイクルと分別やバザーの開催が目標12「つくる責任つかう責任」に関連しています。これらは保護者や家庭での教育も重要となります。

保育業界におけるSDGs導入のポイント

保育業界におけるSDGs導入のポイントとして重要なのは、まず子どもが楽しんで取り組めることです。楽しみながら実践できることで継続的に行えるようになり、自然と意識が高まります。やり方としても一気に進めるのではなく、ステップごとの理解で誰一人取り残さないことを意識しましょう。また家庭でもSDGsに関する絵本を読み聞かせるなど、SDGs保育を各家庭でも実施して頂き、保育士と保護者の連携することが重要となります。

まとめ

保育施設がSDGsの達成に向けて積極的に取り組むことで、子供たちの成長と地域社会の発展に貢献しています。また2025年を機に需要と供給が逆転をすると言われている保育業界においては、SDGsへの取り組みが一つの差別化、施設の価値の創出につながると考えられます。一方でこれらの取り組みを実施するに当たっては、資金調達や教員の研修体制の強化、地域社会との連携のさらなる充実などが必要となります。「持続可能な」という趣旨を鑑みると、継続的にこれらの活動をすることが必要となりますので、長期的な視点を持ち、取り組みを進めることが重要となるでしょう。