【こんなお悩みありませんか?】
- 「日々の保育や職員のマネジメントに追われ、会計は経理担当者や税理士に任せきり…」
- 「決算書を見ても、数字の羅列にしか見えず、自園の経営状態が正直よくわからない…」
- 「会計の重要性は理解しているが、どこから手をつければ良いのか途方に暮れている…」
毎日、子どもたちの笑顔と成長のために奮闘されている経営者の皆様。保育の質の向上、人材育成、保護者対応と、その役割は多岐にわたります。そんな中、「会計」と聞くと、少し後回しにしたくなったり、専門的で難しいと感じたりするのも無理はありません。
しかし、会計は単なる事務作業ではありません。**園の現状を正確に把握し、未来への舵取りをするための、最も信頼できる”羅針盤”**です。
この記事は、お忙しい経営者の皆様のために、会計を「難しい義務」から「経営を支える力強い味方」に変えるためのヒントをお届けします。
なぜ、私たちの園には「特別な会計ルール」があるのか?
全国の保育所の半数以上を運営する社会福祉法人。株式会社などの営利企業と大きく違うのは、その目的です。私たちは利益を株主に分配するために運営しているのではなく、質の高い保育を安定的に、そして継続的に提供するという社会的な使命を担っています。
だからこそ、その公益性の高さから、国や自治体から補助金などの支援を受ける一方で、お金の使い道を明確にするための「社会福祉法人会計基準」という特別なルールが定められているのです。これは、保護者や地域社会の皆様に「いただいたお金は、このように子どもたちのために大切に使っています」と、誠実な経営姿勢を示すための約束でもあります。
決算書は、1年間の頑張りを映す「園の健康診断書」
年に一度提出する決算書。これを「行政に提出するための書類」と捉えるだけでは、非常にもったいないことです。決算書は、まさに自園の経営状態がわかる「健康診断書」。主に以下の3つの書類から、園の強みや課題を読み解くことができます。
資金収支計算書:【お金の出入り】を見る、いわば「血圧測定」
この1年間で「どのような理由で、いくらお金が入り(収入)」「何に、いくら使ったのか(支出)」という、現金の流れがわかります。人件費の割合は適切か、想定外の支出はなかったかなど、資金繰りの実態を把握し、短期的な安全性を確認できます。
事業活動計算書:【今年の経営成績】を見る、いわば「人間ドックの結果報告書」
営利企業の「損益計算書」にあたるものです。保育料や補助金などの収益から、人件費や事業費などの費用を差し引き、最終的にどれだけの利益(または損失)が出たのかがわかります。これにより、1年間の経営活動が効率的だったか、収益性は改善しているか、といった経営の成績を評価できます。
貸借対照表:【財産と借金の状態】を見る、いわば「体組成計」
決算日時点で「園がどれだけの財産(資産)を持っているか」「その財産をどのようなお金(負債・純資産)でまかなっているか」という、財政状態のスナップショットです。将来の施設改修のための積立金は十分か、借入金の割合は高すぎないかなど、中長期的な経営の安定性、つまり経営の体力がわかります。
これらの数字を読み解くことで、「来年度は職員の処遇改善にこれだけ充てられそうだ」「この設備投資は計画的に進めよう」といった、根拠に基づいた次の一手を打つことが可能になります。
経営判断に活かす!会計の重要ポイント
社会福祉法人会計には、経営者が特に意識すべきいくつかの特徴があります。
補助金や寄付金の扱い
補助金や寄付金は、園の運営を支える大切な収入です。これは、行政や支援者からの「子どもたちのために有効に使ってください」という期待の表れです。会計上、これらの収入を他の収入と区別して適切に管理し、どのように保育の質の向上に繋げたかを明確に報告することが、信頼関係を維持・強化する上で不可欠です。
減価償却という考え方
園舎やバス、大型遊具などは、購入した年に一度に費用になるわけではありません。使える年数(耐用年数)に応じて、毎年少しずつ費用として計上していきます。これが「減価償却」です。 「なぜ、そんな面倒なことを?」と思うかもしれませんが、これは将来を見据えた、賢い経営計画の第一歩です。減価償却費を毎年計上することで、「あと何年で、このバスを買い替えるための資金が必要になるな」という計画的な設備投資や修繕計画を立てることが可能になります。
「知らなかった」では済まされない。園を守るための会計の注意点
経営者として、園と職員、そして子どもたちを守るためには、会計上のリスク管理も重要です。
監査と情報開示は「信頼獲得のチャンス」
一定規模以上の法人は、公認会計士などによる外部監査が義務付けられています。これは、厳しいチェックと捉えるのではなく、第三者のお墨付きをもらい、経営の透明性・健全性を保護者や地域社会に示す絶好の機会と捉えましょう。財務情報を適切に開示することは、地域から選ばれ、愛される園になるための重要なステップです。
法改正へのアンテナを高く
子ども・子育て支援新制度をはじめ、保育を取り巻く制度は日々変化しています。法改正は、会計処理の方法にも影響を与えます。常に最新情報をキャッチアップし、時には専門家の助言を仰ぎながら、変化に迅速に対応できる体制を整えておくことが、安定経営の鍵となります。
保育にもっと時間と情熱を注ぐための「会計効率化」のススメ
「会計の重要性はわかった。でも、やはり時間がない…」 そんな経営者の皆様にとって、ITツールや専門家の活用は、時間を生み出すための戦略的な投資です。
会計ソフト・クラウド会計の活用
手作業での記帳や計算は、ミスの元であり、何より時間がかかります。社会福祉法人会計に対応したソフトを導入すれば、日々の取引入力が自動化され、財務諸表もスムーズに作成できます。クラウド型なら、場所を選ばずにデータを確認でき、顧問税理士との情報共有も簡単です。
アウトソーシング(業務委託)という選択肢
会計の専門家を自園で雇用するのは簡単ではありません。記帳代行や決算業務を専門業者にアウトソーシングすれば、経営者は会計業務の負担から解放され、本来注力すべき保育の質の向上や、園の将来構想を練る時間を確保できます。
おわりに
会計は、決してただの事務作業ではありません。それは、先生方が子どもたちと向き合い、職員と協力し、保護者と連携してきた1年間の奮闘の「物語」が詰まった記録であり、未来の保育を描くための設計図です。
まずは、自園の決算書を改めて眺めてみてください。難しい数字の羅列の中に、きっと自園の強みや次へのヒントが見つかるはずです。
もし、一人で読み解くのが難しいと感じたら、決して一人で抱え込まないでください。信頼できる会計士やコンサルタントは、数字の向こう側にある経営課題を共に考え、未来への道を照らしてくれる心強いパートナーになります。
会計を味方につけ、子どもたちの未来、職員の未来、そして園の未来を、より確かなものにしていきましょう。